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帚木蓬生 臓器農場

新任看護婦の規子が偶然、耳にした言葉は「無脳症児」。病院の「特別病棟」で密かに進行していた、恐るべき計画とは何か?真相を追う規子の周囲に、忍び寄る魔の手…。医療技術の最先端「臓器移植」をテーマに、医学の狂気と人間の心に潜む”闇”を描いた、サスペンス長編。現役医師としてのヒューマンな視線、山本周五郎賞作家の脂の乗り切った筆致が冴える、感動の名作。帚木蓬生 臓器農場



新米看護婦として病院に就職した規子。
同僚、先輩看護婦、病院の先生と患者さんたちと出会い
新しい環境の中で素直に成長していく。

ある日、規子は病院近くで妊婦さんと男の人が
「無脳症」について話すのを聞いてしまう。
気になる気になる気になる。
無脳症って出産しても死んでしまうのでは?
なぜ死んでしまうのがわかっている無脳症の子供を
妊娠、しかも出産の話をしているのか?

勤める病院は臓器移植で有名。
ドナーはどこからくるのか?
立ち入り禁止されている特別病棟について
まことしやかに流れる噂と絡め
同期の看護婦となにかと協力的なドクターと一緒に
病院の謎について調べはじめる。

規子は毎日通勤するケーブルカーの
運転士、藤野茂さんと出会う。
藤野茂さんは人より頭が大きく
一目で障害があるということがわかる。(ということが後からわかる)
彼は、脊椎が割れ脳神経が未発達で生まれてきたという。
「頭には少し後遺症があるけれど根性は心臓にある
心臓は悪くないのだから、根性をきたえろ」
という教育をされ、実直にとても素直に成長した彼は
「死んだほうがいいと思ったことは一度もない。」と答える。力強い。
規子にほのかな想いを寄せる藤野茂は
ケーブルカーに乗ったお客さんの顔を決して忘れないというすごい能力
模型を作ることの天才
なによりも等身大の自分を知っている強さがある。
無垢な聡明さがほほえましい。

物語は規子とその仲間が無脳症について深く調べていくことになる。
ある日、ドクターが不慮の事故で亡くなってしまう。
同僚の看護婦も突然の自殺で死んでしまう。
どんどん人が死んで行く。
これが偶然な死などではないと信じる規子は
ひとりで核心に迫って行くこととなる。
建物の不自然な造り、
その中に無脳症児を育成しているという部屋を見つけ
尊敬する先輩とドクターが病院の秘密に関わっていることを知る。
どこか人並みはずれた感性と行動力で
規子を勇気づける藤野茂に協力を得て
ついに、病院の実態が明るみに。


障害児を妊娠してしまったという妊婦は
自分のせいで子供を死なせてしまうと
罪悪感に苦しみ、自分を責め続けてしまう。
例え出産してもすぐに、死んでしまう子供。
産むかどうかの選択を迫られる。
死産の可能性も高い。
生まれたのちに育つことはない無脳症児。
ただひとつ
その臓器を提供し、
他の子供に移植することにより
役に立つことができるという意義ができるという。

臓器移植を多く行いたいがドナー不足に困っている病院。
妊娠中のある時期にビタミンを与えることで無脳症児ができるということを
マウス実験で発見したドクターの野望。
ドナーが見つからず、子供を亡くした看護婦。
障害児を妊娠したことで罪悪感を抱える妊婦。
はたまた、お金に困っている若い女性。
全ての利害関係が一致する臓器農場

倫理に関わる問題も関わる人で見え方が変わる。
欲望と大義をもったどす黒い強さと
無垢でまっすぐな人間のしなやかな強さを語る
610ページもあるちょっと分厚い本。
夢中で先読みするというより
最初からわかっていた解答を答えあわせしていき
規子や藤野茂などの無垢な人物に触れて行く
心地よさがある話だった。

読み方がわからないと
変換することもできない難しい名前の著者。
帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)さんの描く人は
芯があり、人を傷つけない。

利害や善悪が渦巻き、白黒がつかないことが多い日常。
不本意ながらも
天秤にかけ、損得をはからなければならないことも多い。
さらに、他人のイライラに傷つけられるのではないかという警戒心、
些細なことにも敏感に反応してしまうぴりぴりとした緊張感
いわゆるストレス状態、
人との軋轢が普通になってしまっている毎日が
実は違うんじゃないかと気持ち改めさせられた。
ふとした親切、優しさ、純粋で無垢な人と触れると
思わず涙が出そうになってしまうこと自体
異常なんだな。
優しい気持ち、穏やかな気持ちを思いださせてくれる。
グロい話なのに
ほっとしながら読める不思議な本でした。


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theme : 読んだ本。
genre : 本・雑誌

tag : 帚木蓬生 臓器農場

帚木蓬生 閉鎖病棟


とある精神科病棟。思い過去を引きずり、家族や世間から疎まれ遠ざけられながらも、明るく生きようとする患者たち。その日常を破ったのは、ある殺人事件だった…。彼を犯行へと駆り立てたものたちは何か?その理由を知る者たちは…。現役精神科医び作者が、病院の内部を患者の視点から描く。淡々としっつつ優しさの溢れる語り口、感涙を誘う決末が絶賛を浴びた。山本周五郎賞作。帚木蓬生 閉鎖病棟



生まれもって遅い人、
事故や環境で障害が残った人
なにが原因かわからないが
いつの間にか居場所を失いつれてこられ
集まった精神病棟の患者たち。

規則正しく動くことしかできない人と
規則正しく動くことができない人が
病院の中での限られた空間で
不自由ながらもどこか調和をとって生きている。
家族を求め、人とのつながりに温かみを感じる。

淡々と患者の生活が語られ
徐々に見えてくる患者の過去や背景。
色々な理由がある人たちが
互いに許し合い
寄り添い
楽しみを見つけ
些細なことで喜びあえる仲間となっていく。
人から疎んじられ
のけ者にされてきた弱い者の「仲間」。

患者たちにとって病院の外に出かけることだけで大冒険。
ひとつひとつが忘れられない思い出となる。
今まで無為にやり過ごしていた長い時間が
 彼に会いに行こう
 彼女に話に行こう
 みんなで一緒に行こう
と、仲間の笑う顔を想像できるようになると
かけがえのない時となっていく。

そんなある日
病院に通う女の子が病院内の無法者にレイプされてしまう。
それを知った他の患者がその無法者を殺傷、
病院内での殺人事件を起きる。
殺傷した者は逮捕され裁判にかけられる。
仲間たちも
病院を退院したり
自立を試みたり
生きることを試行錯誤していくこととなる。

心ない人と精神病とはまったく別のもの。
人を生かすために
行動を起こせる勇気や優しさ
人がもってる全ての気持ちが沁み入る。
最後、裁判のシーンは
あまりに純粋で切なく
電車の中で涙が出てしまった。

「人の役に立つこと」を本気で考えたとき
人は本当に強くなるのだな、と思った。
他人を思いやり行動を起こすことは
なにか人の役に立つってだけでなくて
自分の気持ちを奮い立たせることになる。
これ、これが大事な気がする。
素朴で無垢な人たちに
純粋な気持ちを駆り立てられる本。
私は誰かの役に立てているかな?


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tag : 帚木蓬生 閉鎖病棟

帚木蓬生 千日紅の恋人 せんにちこうのこいびと


宗像時子は父が遺した古アパート、扇荘の管理人をしている。扇荘には様々な事情を抱えた人たちが住んでおり、彼女はときには厳しく、ときには優しく、彼らと接していた。ある日、新たな入居者が現れた。その名は有馬生馬。ちょっと古風な好青年だった。二度の辛い別離を経験し、恋をあきらめていた時子は、有馬のまっすぐな性格にひかれてゆく。暖かでどこか懐かしい恋愛長篇。
帚木蓬生 千日紅の恋人せんにちこうのこいびと



ついにこの域なのかと
ちょっと苦笑してしまう中年の恋のお話。
毎日を繰り返し真面目に生活している時子。
ヒステリーで噂好きなアパートの管理人を
想像して読み進めた期待を裏切り
とても優しく暖かい人柄に触れることができる。

古いアパート、もっている全てのモノを大切にし
暮らす人たちの人生さえも理解しようと心がけ
できることを精一杯にやっている時子さん。
2回の離婚を通して完全に恋をあきらめた時子さんは
実に素晴らしい人格者なの。
母親を大切にするし
カラオケ教室でも若手としての役割を果たす。
でしゃばらずとも自ら楽しみ、老人を助ける。
「よい奥さんになる」と言われるタイプの女性。
しかし残念。2回離婚しちゃってる不思議な時子さん。
アパートの住人として入居してきた有馬さんとの距離感を
間違わない時子さん。

きっとこの男には裏があるに違いないと疑ってしまう。
ここで過去の男からのどんでん返しが!
とか、全くない。
驚く事に
時子さんが幸せになるほんとうにそういう話だった。
びっくりするほどにトントン拍子。
有馬青年は実に実に好青年。
誠実なだけでは男としての魅力が足りないとか
ここまで独身だったのはどこか問題があるとか
きっと実家が大変だとか
斜っぱことはを誰も言わない。
いや、変なのは名前くらいで
本当に全然、良い人なんだもん。有馬生馬さん。

そんな我々の
他人の不幸は蜜の味的な期待を裏切り裏切りの429ページ。
本の題名でもある千日紅(せんにちこう)も
満場一致の場面に登場。
この作者の精神力の強さったら!

こんなにまっすぐな本を久しぶりに読んだ。
すごい本があるもんだね~、これ。

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genre : 本・雑誌

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気ままな読書が趣味の怠惰な会社員です。雑食系。

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