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午前三時のルースター 垣根涼介


旅行代理店に勤務する長瀬は、得意先の中西社長に孫の慎一郎のベトナム行きに付き添ってほしいという依頼を受ける。慎一郎の本当の目的は、家族に内緒で、失踪した父親の消息を尋ねることだった。現地の娼婦・メイや運転手・ビエンと共に父親を探す一行を何者かが妨害する・・・・最後に辿りついた切ない真実とは。

少年は大人になっていく
ベトナムで失踪した父親を探す少年とおれ。



関わる人たちの思惑に振り回され
身の上に大事件が起こっているというのに
テンションが上がり過ぎない人たち。
自分の会社を心配し過ぎるわりに、
大胆に計画しすぎる祖父。
クール過ぎる少年と
かっこ良過ぎる添乗員。
でき過ぎる運転手と
タイミングが良過ぎる娼婦。
ついに探し当てた父親は強く賢い男だった。

異国の土地で走って戦って色々あって、
がんばってがんばって悪い人たちから無事に逃げ切って
ようやく再会を果たした親子。
よかった。会えた。
案の定ではあったけど
そこには別の女性もいて
父には父の生活があった。
自分の人生を生きる父を認める少年。
そして、別れの時。
息子に高価な時計を与える父親。

ざらっとした。
息子を捨てたことを許されたい気持ちと
子どもを心配する親っていう体裁
父親自身の成功の自慢が透けている
これをもってして
「お父さん、ありがとう」とは思えないんじゃないかって
逆に傷ついてしまうかもと。

時計を捨てた瞬間、
少年が大人になったってことなのか。


少年は、父親を連れて帰ろうとも
父親と一緒にいようとも望んではなかったんじゃないかと。
ただただ褒めてほしかっただけなんじゃないかなと。
父親の捨てた人生を自分は選ぶ覚悟で
自分の存在価値を認めてもらう最後のチャンスと
探しまわったんじゃないのかな。
そんな設定じゃなかったっけ?
動揺したり、感動したりはかっこ悪いのかな?
でき過ぎの展開に、ドキドキもせず読めちゃうんだけど
なんだかちょっと中だるみだった。
少年が、なんのために父親を探したかったのかを
読みながらも見失うという集中力の欠けようだったし。


サイゴンのホテルで聞いた
午前三時の一番鶏(ルースター)の鳴き声・・・

題名になった一番鶏のくだりがラストに出てきて
これが言いたかったのかと。長っ!



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theme : 読んだ本。
genre : 本・雑誌

噂 荻原浩

荻原 浩
新潮社
発売日:2006-02


「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売戦略どおり、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実となり、足首のない少女の痛いが発見された。衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。
噂 荻原浩



妻を病気でなくし、女子高生の娘と二人暮らしの小暮刑事。
女子高生連続殺人事件が発生する。
被害者のひとりは娘の友人でもあった。

噂の発信源は広告企画会社の女社長である杖村。
彼女の斬新な戦略はWORD OF MOUTH。
ようするに「口コミ」を巧みに利用することにより
これまで見向きもされなかった商品を次々とヒット作に変えていった。

口コミの核となる商品にまつわる話を
あくまで「噂」として広めていくため
商品と絡めて印象に残るような噂話を作り出すのだ。

新ブランド、ミリエルという香水販売に企画されたのは
ニューヨークで大人気、芸能人も密かにつかっている、
そして、刺激ある噂とすべく
殺人鬼「レインマン」が追加された。
レインコートを着たレインマンは女子高生を殺し、足首を切るという。
しかし、ミリエルをつけていれば狙われないという設定だ。

渋谷の女子高生を発信源として
ミリエルのモニター会を開き
あくまでコミュニケーションの伝達調査として
ミリエルと一緒にこの噂を友達に話すよう依頼する。
予定通り、ミリエルは大ヒット。
商品を後押しする噂も女子高生の間で瞬く間に広がった。

そんな中起こった女子高生の連続殺人事件。
レインマンの噂通りに足首を切られた遺体が見つかる。
警察本部では
犯罪歴のある男を容疑者として追いかけている。
しかし、渋谷の女子高生から聞いた「噂」に気づき
「噂」を追いかけはじめる小暮と名島。
ついにレインマンとコムサイトが繋がる。

口裂け女のように
もはや誰がなんのため広まったのかわからない都市伝説。
誰も信用していない「噂」を中心に
頭の固い大人と大人を信頼しない女子高生が
徐々に距離を縮めて行く展開がおもしろかった。
名島刑事が作った噂の伝播マップ。
情報が錯綜し、
間違った人を犯人に仕立てあげる本部を横に
情報をまとめて
人に伝わる形にできる賢い名島さん。素敵。

実は、杖村さんにはSM女王という過去があり
その顧客であった大物たちを利用してのし上がったという裏話あり。
人物?職業?を蔑む設定が
荻原さんに馴染まないような気がしたけど
ありそでなさそな話でおもしろかった。

物売る会社で働く私。
口コミを利用して、販促を企画することもあるだけに
この本はフィクションであり、お話なんだとは思いつつ
杖村さんのムリのある企画?に「そう簡単に物が売れてたまるか!」とも。
売れればなんでもいいけど
口コミ戦略を完全に無視する体勢のメーカー陣営が
正攻法だけではダメだと言う経営陣とかぶってかぶって。
そこだけやけにリアルに沁み入る
私オリジナルのツボもある本でした。


theme : 読んだ本。
genre : 本・雑誌

白の鳥と黒の鳥 いしいしんじ

いしい しんじ
角川グループパブリッシング
発売日:2008-11-22


たとえば某日。ねじまわしに導かれ、太ったひとばかりが住む村に行く。某夜、上野の立ち飲み屋台で国民的作曲家のよた話をきく。またある日、謎の珍味”こぎゅんぱ”に随喜し、獰猛な巨大モミジをみんなで狩りに行く―いしいしんじが聴き取った、ちょっと奇妙な世界の消息をお届けします。生きていることの不思議さと不気味さ、そして愛らしさがくるくるときらめく、万華鏡のようなショート・ストーリー集。


・肉屋おうむ
死に際の父親にラーが言った一言。
「おまえさん、むだじに、じゃないぞ」

・しろねずみ
・せみ子の黄色い傘

・カラタチとブルーベル
女優の双子。

・薄い金髪のジェーン
外人のほら話と駄洒落。
バンジョーと波乱万丈…

・オールド・ブラック・フォスター
・赤と青の双子
望まれない子ども。

・魔法のリコーダー
願いがかなう魔法のリコーダー。

・紫の化粧
おかまの切ない日常。

・紅葉狩り顛末

・すげ替えられた顔色
顔が盗まれた話

・ボウリングピンの立つ所
タクシー運転手の憂い

・緑春

・わたしの千食一夜―第百二十三回―ひらめ、アオヤギ、こぎゅんぱの巻
アオヤギという名の山羊

・白黒の鳥の声
鳥の言葉が人の言葉に聞こえ始めて
ドクタードリトルみたいになっちゃった話

・おっとせいを飼う
妻のためにおっとせいを飼い始めた夫。
別れるのに理由はいらないのだけど。

・薄桃色の猫たち
喘息の息子が飼うのは毛をかられた猫たちだった

・透明に関する四つの小話
・太ったひとばかりが住んでいる村



いしいしんじワールドを読み続け
お腹いっぱいになった。
おはなしを想像することがおっくうになるなんて。
老いだ老い。

子どもの頃は
「ウズベキスタンの話です」とあっても
それが人なのか動物なのか場所かなんてわからなかったし
知らないこと信じられない話があって当たり前
世界そのものが架空みたいなもんだった。
今だってウズベキスタンについては怪しいもんだ。
西の方にある国なのではないかとは思うが
都市の名前だよと言われれば
「そうか」と受け入れられる薄さ。
そんな程度でも
聞いたことあることとないことってのは
大きな大きな壁があるんだと。
でも、そういう文化や背景を知らなくても想像力さえあれば
物語は紡げるのだと思う。
うそこのごっこ遊びは
葉っぱ1枚がお皿となりお金となり
どんだけリアルにはなしを紡ぎだせるかで
真価が問われるわけで
獰猛な紅葉を狩りに行くと言われれば
鼻から疑ったりはせず
外国のジャングル辺りには
そんな紅葉があるのかもと想像したかもしれない。
そして今のこの架空を楽しもうとしようとする
その意識自体が、おお、かなり大人っぽいことなのか。
自分に都合のいい割と生々しい絵空事という意味の
妄想はやめられないけど。
これはこれで想像とおなじ遊びなのかな?

ちょっと悲しげだったり
雲が晴れないトーンに
時にやりきれない気分にもなる
いしいしんじさんの世界観。
こういうのもありっちゃありだけど
根っこにある寂しさが余韻となってしまって困る。


theme : こんな本を読んだ
genre : 本・雑誌

ポーの話 いしいしんじ

いしい しんじ
新潮社
発売日:2005-05-28


あまたの橋が架かる町。眠るように流れる泥の川。太古から岸辺に住み着く「うなぎ女」たちを母として、ポーは生まれた。やがて稀代の盗人「メリーゴーランド」と知り合い、夜な夜な悪事を働くようになる。だがある夏、500年ぶりの土砂降りが町を襲い、敵意にあらんだ遠い下流へとポーを押し流す……。いしいしんじが到達した深く遥かな物語世界。驚愕と感動に胸をゆすぶられる最高傑作。


うなぎ女、メリーゴーランドとその妹のひまし油、天気売り。
老人と少年と子どもという名の犬。
埋め屋の女房とその亭主。
海辺の町。

うなぎ女の子どもとして生まれたポー。
指と指の間に水かきをもち
水の中を自由に行き来する無垢な生き物。
国も町も生き物さえ架空な世界で
辛いこと悲しいことを体験していくポー。

写真てのは、つまり、大切な嬉しいものなんだな。
メリーゴンラドと出会って覚える罪悪感。
自分の気持ちを持て余し夜眠れないポー。
つぐないについて考える。

犬じじは言う。
「わしらはな、死んだ体をなによりも
大事に扱わなきゃならねえ。
この世の、どんなものよりいちばんにだ。」

さて。
ファンタジーなのか絵本なのか、この世界観。
うなぎ女てなんなんだ。ポーってなんなんだ。
架空の生き物がふわふわ。
なんだろ。
ポーはなんで罪悪感を持つのだろう。
「つぐない」という行為ってなんなんだろう。
フルフル。フルフル。

ひまし油は誰の子どもを身籠ったのか。

この世に誕生した瞬間から
自然の一部として
世界とつながっていることを
確かめずにはいられないことに
驚愕と感動に胸を揺すぶられることはない。

いいとも悪いとも
なんとも感想の持ちづらいお話。
ポーが無垢過ぎるのかいい人過ぎるのか
怒りとか焦りとか
日常に溢れているはずの感情がまったく欠落していて
どうにもふわふわしちゃってね。

theme : 読んだ本。
genre : 本・雑誌

東京夜話 いしいしんじ

いしい しんじ
新潮社
発売日:2006-11


田町のアパートの一室にひっそりとあった闇のバー。酒と詩情溢れる「うつぼかずらの夜」。新宿で世にも可憐なダッチワイフを助ける「天使はジェット気流に乗って」。大海で出会った二匹が築地で思いを遂げる純愛物語「クロマグロとシロザケ」など、東京の街を舞台とする全18篇。『ぶらんこ乗り』の前史時代、原石の魅力が煌めく幻のデビュー短篇集。『とーきょー いしい あるき』改題。



あ。この人って酒飲みのおじさんだったんだ。
勝手に草食系なまじめな人を想像していたのが
完全に裏切られた。嬉しい。
随所に食べ物を丁寧に表現するところ、東海林さだおを思い出す。
急がない、こだわらない、馴染む、居座る、寝転がる。
ちょっと日常っぽいけど、日常でもないような本当に短い短篇。


 ・真夜中の生ゴミ 下北沢
「長髪で『尾崎っぽい』のが杉並、『メタルっぽい』『パンクっぽい』のが、まず世田谷だね、ええ。あと『ヒップホップ』もうちかな。『ジャズ』はあっち」
ぺらぺらにして洋服から抜き取る生ゴミ(!)

 ・ベガ星人はアップルパイが得意なの 原宿
宇宙人に認められた「ぼく」が壊れた子なのか?

 ・お墓アンダーグランド 上野・谷中
お墓の先にある三丁目の夕日的異次元で出会う
さっちゃん!さっちゃん!さっちゃん!

 ・魚のおろし方を学ぶ速度で 新宿西口新都心
「だんだんわかってくることってあると思うんだ。魚のおろし方とか」
昔のままなことを喜び、自分の知らない成長に切なさを感じる。
大人の喜び、大人のわがまま。
そんな男の純情をニヤニヤと読んでしまった。
魚をおろせるようになった背景とか真実なんてのは無粋ってことで。

 ・老将軍のオセロゲーム 神保町
人生に起こることが書かれている運命の本を探す老人の話。
インドの葉っぱ占いみたいなので
全人類の運命が一枚一枚書いてあるってそんなのあるね、
偽物だらけらしいけど、なんだっけかな。

 ・クロマグロとシロザケ
いや、ちょっと、どうなんでしょうか、これ。
魅入られたように動けなくなるような美しさより
生物としてのグロを感じてしまった。

 ・そこにいるの? 大久保
笑うラジオ
ちょっとした集団催眠じゃないのか、これ。

 ・クリスマス追跡 渋谷
数年か無視し続けていたクリスマスを見極めようとする話
クリスマスは堕落も更正もしていないぞ。
おもしろい!

 ・『クラブ化する日本―その中心部をめぐる一考察』 銀座
全国にある銀座に気がつく何ぞ、なかなかの視点。
「武蔵境」に境目を探しに行ったという外国人と会ったことがある。
人の気になる視点っておもしろい。

 ・うつぼかずらの夜 田町
うなぎの寝床のようなアパートの一室で勝手に闇バーを開くNとSとぼく。
お客さんがほいほい集まる酔狂な2年間。
酔いつぶれることも幸せだった。

うつぼかずらとは
マレーシアからボルネオ島、スマトラ島、フィリピンなどに分布する食虫植物。
口を開き、ひょうたんのようにぶらさがる姿が不気味。
植物のくせに虫を食べるって怖い。ハエ取りとかでも使うらしい。

 ・すごい虎 柴又
トラを待つ街でぶらぶら暮らすイヌ目線の話。
イヌに落書きって違和感なんだけど。
あ、まゆげ書いたりする人いるか。

 ・正直袋の神経衰弱 池袋
田舎は農家の池袋。渋谷や新宿に並ぶ立ち位置に悩む。
なにがなんだかでおもしろい。
適当過ぎる感想だけど、そんなかんじなんだもの。

 ・アメーバー横町の女 上野・アメ横
アメ横には気がついてはいけないお店があるらしい。

 ・もんすら様 巣鴨
巣鴨には行ったことがない。
なんだかものすごい魔力があるみたいだ。
私もおばあさんになる前に
わざわざ耳かきを買いに行ってしまうのだろうか。
行ってしまいそうなくらい魅力的。

 ・お面法廷 霞ヶ関
ちょっとありそでなさそなシュールな裁判。
自分で選べる「役柄」って大事だな。

 ・天使はジェット気流に乗って 新宿ゴールデン街
ダッチワイフと過ごした貴重な時間。
アムステルダムに送られても…
故郷はやっぱり日本じゃないのか?

 ・吾妻橋の下、イヌは流れる 浅草
元住職のホームレス先生とおでんをつつく男。
「空というのは、だしや。具の空間を埋め、具にしみる「だし」、これが空や」
と言って、おでんのだしが継ぎ足されるすご技。
その先生が落書きイヌをつれて歩き出す。あ。柴又のアイツだ。
姿が見えなくなり、てっきり死んだと思われた先生は
実は寺にもどり、イヌと一緒におじいさんとして暮らしていましたとさ。
めでたしめでたし

 ・二月二十日 産卵。 東京湾
日比谷公園でポッップコーン、おにぎり、卵焼き。
銀座通りでハムサンド、キャベツ、レタスで満腹。
中央防波堤でさちこって書いてある赤いゴムまりを見つけ、投げ合って遊ぶ。
たぶんカラスだろうと思ったけれどやっぱりカラスだった。
鳥たちも生きるためにがんばっているんだな。

theme : 読んだ本。
genre : 本・雑誌

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気ままな読書が趣味の怠惰な会社員です。雑食系。

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